日本財団 図書館


 

006-1.gif

図4 ジョギングの筋電図。

 

のことから、踵押し上げ時にみられるハムストリングスの放電様相はジョギング特有のものと思われる。

5. ニューエクササイズウォーキング

図5は、?@背すじを伸ばす、?A足先を少し外向きにし一直線上に踵を置く、?B後足で踵を強く押し出す、この3点2.9)を意識した歩行の筋電図である(図6参照)。
図5に示すように、前進力の得られる踵押し上げ時のハムストリングス(大腿二頭筋)の放電様相はジョギングと極めて類似した9)。また、踵着地後から踵押し上げの足底全面接地の間、大腿直筋・大殿筋に強い放電がみられる傾向が認められた。これは背すじを伸ばすこと(上体の引き上げ)によって、大腿筋に影響を及ぼしていることが推測された。
また、背すじを伸ばすことを意識するには、背筋上部を積極的に使わなければいけない。この筋の使い方を習得するには、背筋上部の筋活動を音(あるいはメーターの針の振れ)に変え、本人に認識させる筋電図バイオフィードバックが非常に効果的である(図7)。
図8は、筋電図バイオフィードバックによる姿勢矯正を示している。
悪い姿勢(ねこ背)では筋電図バイオフィードバック計のブザー音はならないが、背すじを伸ばした良い姿勢になると背筋上部が強く働き筋電図バイオフィードバック計のブザー音がなり、姿勢矯正が容易に行なえた。現在のところ、筋電図バイオフィードバック計は高価なので1家に1台というわけにはいかない。しかし、このような筋電図バイオフィードバック計がなくても、鏡等を用いて姿勢矯正を行なう方法でも十分効果はあげられる。
以上のことから、歩行速度をあげなくても背すじを伸ばすこと等を意識した歩行は、踵押し上げ時、ジョギングと同様にハムストリングスが参画することがわかってきた。また、背すじを伸ばすことを意識することによって躯幹筋(背筋上部・腹筋)が働き、姿勢矯正がなされた。
背すじを伸ばす等を意識した歩行は、日常歩行や大股速足のエクササイズウォーキングに比べ、参画する筋や、姿勢に及ぼす効果等が異なった。そこで、日常歩行に背すじを伸ばす等を取り入れた歩行様式を、日常歩行やエクササイズウォーキングと区別するため、ニューエクササイズウォーキング9)(New exercise walking)と呼ぶことにした(図6)。
このニューエクササイズウォーキングは、速度をあげることなく、腕振りも自然であるので、街中においても人目を気にせず行なうことができ、姿勢も矯正され筋活動の面から十分運動となることが示唆された。実際、日常歩行に比べ、躯幹筋・大腿筋の多くの筋を積極的に使うので、普段運動不足であまり筋肉を使っていない人には、推奨できる歩行法であると考える。

6. 高齢者歩行

図9の右は85歳の高齢者歩行、左は1歳の乳幼児独立歩行習得初期の筋電図である。
高齢者の歩行は、背中と膝がまがり、小股すり足でスロースピードであるのが大きな特徴である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION